人は、
もう二度と会えないと分かったとき、
はじめて優しくなれるのかもしれない。
少し前に、
昔付き合っていた彼女が亡くなったと聞いた。
その後、もう少し詳しい話が入ってきた。
がんだったそうだ。
見つかったときにはだいぶ進んでいて、
闘病期間は数か月だったという。
30年以上会っていない。
最後に会ったのは、彼女が結婚して間もない頃。
それが本当に最後になった。
◆ 実感はないのに、心は静かに揺れる
長い時間会っていなかったから、
日常が急に崩れるわけではない。
それでも、
「もうこの世にいない」という事実だけが、
静かに心の奥に残る。
もしどこかで再会することがあったら。
もし偶然すれ違ったら。
そんな可能性は、完全に消えた。
それが、思っていたより重たい。
◆ 若い頃の未熟さを思い出す
正直に言えば、
若い頃の自分は未熟だった。
意地もあったし、
素直じゃなかったし、
優しくできなかった場面もあった。
当時はそれが精一杯だったけれど、
今の自分なら、
もっと違う言葉を選べたかもしれないと思う。
でも、もうそれは叶わない。
◆ 悔いではなく、静かな受け止め
これは未練の話ではない。
復縁したかったわけでもない。
人生をやり直したいわけでもない。
ただ、
確かに同じ時間を生きた人が、
もういない。
それだけで、
人は少しだけ優しくなる。
自分にも。
他人にも。
◆ 今日という時間
がんは誰にでも起こり得る。
健康だと思っていた日常が、
ある日突然、違う色になることもある。
だからこそ、
今そばにいる人に対して、
少しだけ丁寧でいたい。
意地を張るより、
ありがとうと言えるほうがいい。
もう会えない人がいると分かったとき、
やっとそう思える。
今日は、
少しだけ静かな気持ちでいる。
それでいい。

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